織本コウ「温度差」

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真夏日の昼下がり、冷房の効いた部屋で熱い紅茶に口をつける。
氷で冷えたオレンジジュースをたどたどしくストローで吸う姪っ子を見ていると共感されない嗜好なのだと改めて感じる。

「それで実ちゃん、今日は何の用かしら?」

平日の朝、小学生である姪は学校ではなく私の住むアパートにいる。
訝しげに視線を向けると実ちゃんはズズズとジュースを飲み干して口を開いた。

「だって学校つまんないんだもん」
「お母さんは知ってるの?」
「学校には風邪で休むって言ったもん」

無邪気な顔で非行発言する姪の将来が少し心配になった。

「まこちゃんは大学辞めたの言ったの?」
「それは……」

面倒くさくて辞めた大学。退学通知を見られてしまった実ちゃん以外には未だに言えていないのだけど。
それから何かあると学校を休んではアパートに入り浸るようになってしまい注意をしようものなら脅迫してくるのだから九歳の子供と言えど恐ろしい。
私の苦悩を他所目にコロコロと口の中で氷を転がす姿は年相応なのにな……

「それで今日はどうしたの?」

再び訪ねてきた理由を問う。

「んー? まこちゃんってチュウした事ある?」
「……あるわよ」

何となく見栄を張って嘘をついた。

「クラスじゃみんな彼氏としてるんだって」
「え? はやくない? 小三だよね?」
「早い子は一年生の時からしてるよ?」

最近の子ってそんなに早いの……?

「熱ッ!?」

冷静を保つ為に急いでカップを口に運ぶも舌を火傷してしまう。

「だからまこちゃん……練習させて?」

性の乱れに思考を奪われているといつの間にかすぐ目の前に実ちゃんの顔があった。
純粋無垢な瞳は私を捉え、そして私の唇に柔らかい感触が伝わった。

「つッ!?」

次の瞬間には私の口内に冷たくなった実ちゃんの舌が入り込み、脳が痺れる感覚に陥った。
抵抗しようにも経験した事の無い感覚が電撃のように全身に走り、力が抜けていった――

「まこちゃん大丈夫?」

気が付くと気絶していたみたいで実ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込む。
咄嗟に口を手で覆うと実ちゃんは悪戯っぽく笑みを浮かべた。

「また練習しようね、断ったらまこちゃんが大学やめた事バラすからね?」

そう言って氷を口に放り込みコロコロと転がす姪っ子の姿は年相応以上に見えた気がした。

作家コメント
子供ってよく氷食べてる気がします。
参考 織本コウ作者Twitter
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