久良伎「そんな日は来なくていい」

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「もうやだ……明日なんて来ないでほしい……」
日曜日の夜。わたしがお姉さんのお家に遊びに行けない日は、決まって電話がかかってきて、お姉さんはいつも、だいたいこんな感じの弱音をわたしにだけ聞かせてくれます。

「今日も何もできなかったんだね」
「うん……」
「あーあ、だめなお姉さんだ」
「ひどい……でもそうだね……」

毎日毎日たくさん働いて、お姉さんはようやく休日を迎える。うまく時間を使ってちゃんとした一日を送ろう、そう考えていたはずなのに、結局だらだらと過ごして、何もできずに終わってしまうみたいで。
「昨日だってお買い物行こうと考えてたのに、結局行かなかったし……今日も、せめて部屋のお掃除くらいしようと思ってたのに、ずっと動画見て過ごしちゃって」
「で、今になって後悔してる?」
「そう、だね……」

しっかりしていたい。こういう自分でありたい。でも、そうはいられない。なりたい自分にはなかなか追いつかない。理想の自分に、お姉さんは苦しめられている。

「休みなんだから、何もしなくたっていいと思うけどなぁ」
「でも、本当に何もしないと後で自分が嫌になる……」
「むずかしいなぁ」

しっかりした大人になりなさい。お母さんはいつもそんなことをわたしに口うるさく言ってくる。大人はちゃんとしていなきゃいけないって、そういう決まりがあるみたい。誰が作ったんだろう。いらないのに。

だって……
お姉さんがしっかりした大人になったら、きっと、弱いところはもう見せてくれなくなっちゃうから。

「ちゃんとしなきゃって思うんだけど。うまくいかなくてさ……」
「うん」
いいのに、そんなの。

「どうしても起き上がれないんだよね」
「うん……」
ぐったりしてるお姉さん、可愛いよ。すっごく。

「もっと、みーちゃんに相応しいお姉さんでいたいなって、思うし」
「そっか」
わたしは、こうやって泣きついてくれるお姉さんが好きなんだよ。わたしにだけ、そうしてくれるお姉さんが。

「頑張らなきゃ……」
「できるのかなぁ、お姉さんに」
「もー、いじわるだよ……」

そんなことしなくていいから。

もっともっと、弱くなっていいよ。

参考 久良伎作者Twitter
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