成町京「言葉のアヤ」

彩先生は罪づくりだ。

さっきの言葉、私以外にも言っているんでしょ。
その言葉、結構ドキッてくるんだよ。男には。
わかってる。
彩先生は、男とかの気を引くために言っているわけではないことを。
無意識に出ちゃう。
ちょっと抜けてる、って世間では言うのかな。
わかってる、けど…
なんでかな。
この言葉を独り占めしたいって
誰にもそういうこと言わないでって
思っちゃうのは。

彩先生。
先生をもっとたくさん知りたかった。
先生にもっと私を知ってほしかった。
だから…
だからこそ…
嫌いになった。

たとえば…

この前の古典の時間。源氏物語。
「もう30近いから私もそろそろ結婚したいな、良さそうな人知っている人は教えてね」
とか、
そういう冗談を平気で言える彩先生。
美しいんだから、自分から探さなくてもできるはずなのに。
この間、総合体育大会の時、楽しそうに元哉先生と話してたじゃん。
周りのみんな笑ってる。
彩先生も。

毎週金曜日の放課後。部会の日。
文芸部に入ったのに、一度も部会に来てくれない、彩先生。
副顧問のはずなのに。
もうずっと前から来てないのかな。
顧問が来た時点で部会はスタートしてしまう。
みんな、彩先生なんていなかったみたいに。
部活動紹介に、先生の名前、あったのに。
私、なんで文芸部に入ったんだろう。

もう、彩先生なんて嫌いになってやろうって思っていたのに。
私もみんなみたいに男子を好きになって、付き合って…
学園祭近いから
私、自分のこと、ふつうよりは上だと思ってるから
やろうと思えばできると思ってた。
だからちょっと彩先生のこと避けてた、のに…
掃除終わりに。廊下で。

「文芸部なんだよね、次の学園祭の作品、期待してるよ」

って…。
たった一言なのに。
私が文芸部員であったこと、知らなかったみたいな言い草なのに。
こんなことで気が変わったりはしないのに。
私は…。

やっぱり、彩先生は罪づくりだ。

作家コメント
心の中を詠んでみました。
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