あめやゆき「秋の空」

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――秋の空は、どうしてこんなに高く見えるんだろう。
両手を伸ばしながら、不思議に思う。
きっと、本当に高さが変わってしまったわけじゃない。
きっと、春とも、夏とも、その大きさに違いはない。晴れたの日の色だって、真っ白な雲の数だって、何にも一つも変わっていない。
なのにどうして、こんなにも高く、見えるんだろう――。
「不思議だよね」
突然かけられた声にびっくりして、ぱっと振り向く。と、親友ののあちゃんが、優しい表情を浮かべて隣に立っていた。
「……わたし、声に出してた?」
だとしたら、恥ずかしい……そう思ったけれど。
「ううん。なんとなく、そんな風なこと考えてるんだろうなって、ね」
笑って、のあちゃんは空を見上げた。
「不思議だよね、秋の空って」
すっと伸びる、二つの手。
長い両手が、さっきまでわたしがしていたみたいに、空を目指して、まっすぐ伸びる。
「――他の季節と何にも変わらないはずなのに、どうして、こんなに高く見えるんだろうね」
やわらかく、続けられた言葉。
わたしは思わず、その横顔を見つめていた。両目を大きく開いて、見つめていた。
だって――だってその言葉は、さっきまで自分が思っていたことと、同じものだったから――そっくりそのまま、同じ言葉だったから。
きらり。きらり。
眩しさに細められた瞳が、空の色を映して、小さくきらめく。
(……のあちゃんにも、同じ風に見えているのかな)
もう一度、上を向いて、空を見る。
晴れ渡る、秋の空。青く透き通るその空は、変わらず、どこまでも高く、どこまでも、どこまでも、遠く大きく広がっている。
――わたしの目に見えている、この景色。わたしの目に映っている、この世界。それが、同じように、見えているのだろうか。同じように、映っているのだろうか――大好きな彼女の、二つの瞳にも。
(もし、そうだったら……)
――もしも、そうだったなら。
ふんわり、ふんわり、のぼってくる、くすぐったい気持ち。ほんのり熱くなった頬が、浮かぶ雲みたいに綻んでいくのを感じながら、わたしはぐーっと、両手を伸ばした。
空へ、空へ、空へ――さっきよりも、もっと高く。体ごと、いっぱいに。

参考 あめやゆき作者pixiv
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