荒井チェイサー「キモノキル」

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「これで……うん、終わり」
着物を着たナツメの体を姿見の方に直すと、映った自分を見てナツメはふふっと笑った。
「すごい、かわいくできてる」
帯にあるぱっと咲いた朝顔のように明るい笑顔を見て、こちらも顔がほころぶ。
「ミユちゃんってほんと、なんでもできるよね」
「そんなことないよ」
「だって、お料理もできるし、勉強もできるし、加えてこんな……着物の着付けまでできるなんて」
「たまたまだよ」
「うらやましいな」
「なんでもそうだけど……習えばある程度はできるようになるんだよ」
「先生に習っても勉強の成績上がらないけどなあ」
「ちゃんと聞かないと、ダメ」
私が意地悪を言うと、少しだけ頬を膨らませた後、すぐに吹きだして笑う。
「確かに、ちゃんと聞いてない私がダメだね」
「まあ、私でいいなら教えるけどね」
「じゃあ、なに教えてもらおうかな~」
「手加減はしてよ?」
「うーーーんとね、じゃあ、着物の着方」
「え?」
「着物の着方がわかればさ、ミユちゃんの手間取らせないし」
「あ、なるほど……そういう……」
そこまで言った私の心に薄暗い願いが浮かび上がってきた。
だから……。
「うーん、ダメ」
「え、なんで?」
「私の教え方って我流だし、もっとちゃんとしたところで習った方がいいよ」
「えー……そっか、残念」
「ごめんね」
「じゃあ、これからもミユちゃんに頼るけどいい?」
「しょうがないな」
そう言いつつも、心の中ではにやけてしまっていた。
だって、ナツメの着付けを手伝う口実が出来たのだもの。
そして……。
一番にナツメのかわいい着物姿を見られる権利を……手に入れたから。

作家コメント
百合作品書いております、よろしくお願いします。
参考 荒井チェイサー作者Twitter
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