成町京「交差点」

6時になった。部活の荷物を片付け、いつもの場所へ向かう。3組の自転車置き場。そこが私たちの待ち合わせ場所。
「おまたせ!帰ろ!」
自転車に乗り、学校前の通りを下る。芽衣とはクラスが離れてから、この時間が唯一話すことができる時間になっていた。話すこととはいっても、部活や委員会も異なれば共通でわかりあえる話題も少ない。でも、この時間が楽しかった。芽衣の話を聞いていると私までその悲しみや楽しさに触れることができる気がした。なんでなんだろう。部活でもそんなことないのに…やっぱり芽衣が話しているからなのかな。
でも、そんな時間も次の交差点でおしまい。私は直進するけど、芽衣は右へ曲がってしまう。右の信号は赤。芽衣は信号待ちをする。この信号が青に変わったら、私たちはお互いの道へ行く。次会うのは来週の月曜日の放課後。いつもこの待ち時間が私を悲しい気持ちへさせる。
青。
芽衣は自転車のペダルをこいで、反対側へと向かう。直進の私の信号は赤だ。私は自転車から乗り出して、芽衣に向って叫ぶ。
「じゃーねー、芽衣!」
もう反対の歩道に着いている芽衣も振り返って
「バイバイ!柚子!」
そしてもう一度。
「じゃーねー、また!」
「うん!バイバイ、柚子!」
信号はそろそろ青になりそうだ。右へ曲がった芽衣は遠くなっていく。より大きな声で
「じゃーねー!芽衣!」
「じゃーねー!柚子!」
もう青になってしまった。柚子を目で追いかけるが、直進車が妨げる。もう芽衣は見えない。私も自転車のペダルを回し横断歩道を渡った。


私は信号待ちをしている。今や夫も娘もいる、立派な事務員さんだ。でも、もう20年もたっているのに…似た交差点を見ると思い出す。
学校帰りのたったの15分。私にとって忘れられない15分。芽衣にとってはすぐに通り過ぎちゃう15分だったのかな。
芽衣はこんな交差点を見たら何を感じるのかな。

青。ブレーキから足を離し、アクセルを徐々に踏みこんだ。

作家コメント
ささやかな百合を書きました!
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