ヘタノヨコヅキ「ありがとうの意味」

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「マキちゃんはさ、なんで告白されても『ありがとう』しか言わないの?」


アタシの言葉に、マキちゃんは動きを止めた。


「……び、っくりした。ハルって、そういう話しないと思ってた……」
「失礼な! アタシだって親友の恋愛ジジョーなら気にするよ!」
「そう、なのね。……ありがとう?」
「だからそれ! 何でなんで!」


子供のように『何で』を連呼してるアタシを見て、マキちゃんはお弁当箱の上に箸を置く。
マキちゃんが口を開いた、その瞬間。


「――ただの、逃げよ」


マキちゃんのキレイな黒髪が……高校の校舎裏に吹いた風で、揺れた。


「……逃げてるって、こと?」
「えぇ、そう。私は、逃げているの」
「マキちゃんは、何から逃げてるの?」


困ったように笑ったマキちゃんは、風で乱れた自分の髪を撫でてる。


「相手から、かな。……えぇ、相手から。私は相手から逃げるために、告白は『ありがとう』としか返さないの」
「でもマキちゃんは、誰かと付き合ったりしないよね?」
「そうね。ハルも知っている通り、私は今まで誰とも付き合ったことがないわ」
「だったらフツー『ごめんなさい』って言うんじゃないの?」


しつこい質問にも、マキちゃん笑顔で答えてくれた。


「『ごめんなさい』って、相手の気持ちを否定しているような感じがするの。だけど、あなたの気持ちを否定していないとか、好きという気持ちには応えられないけれどすごく嬉しかったとか……言葉を沢山重ねてしまうと、意味がきちんと伝わらない気がして……。だから、私は『ありがとう』しか言わないのよ」
「ふ~ん……?」


マキちゃんの言ってることは、よくわからない。
唇を尖らせたアタシを見て、マキちゃんは優しく笑う。


「こんなこと、ハルにしか話したことないのよ? だから、内緒にしてね?」


きっとマキちゃんは、誰に告白されても『ありがとう』しか言わないんだ。


「うん! わかったよ、マキちゃん!」


それは、たぶん……アタシでも。

作家コメント
こういう雰囲気が好きです……!(誰かに伝わりますように!←)
参考 ヘタノヨコヅキ作者Twitter
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