玉置こさめ「アルストロメリア」

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こんなことはだめなのよう、わかっているの? と先生は云う。
こんなことされても困る。職員室で彼女は嘆く。
ふわふわした髪をゆるくふたつに結んで、おっとりとした立ち居振る舞い。
それらしく先生をつとめているけれど、本当はかわいい人だということをわたしは知っている。
生徒を叱るのが苦手だってことも。

でも心じゃ欲しているの知っているの、わたし。

机の上に山積みの贈り物は生徒たちからの愛のしるし。本日は大人気の先生の誕生日。
私物の持込は駄目なのに差し出されて断れないあなたは優しい人。わたしの先生。
わたしは学級委員だから、クラスメイトを代表して呼び出された。
クラスの大半がこんなものを持ってくるなんて思わなかったとお説教。
あなたは気付いていた? 生徒たちがプレゼントの用意をしていたこと。
問い詰められて、わたしは知らないと答える。
いいえ、先生知りません。
半月前からみんなで話し合ってたことも。
先生の授業が始まるまでの中休みの間に急いで教室を紙の花で飾りつけたことも。
黒板にハッピバースデーとカラフルに書き付けたことも。
先生が入ってきた途端に驚かそうだなんて計画も。私は少しも。
つらつらと嘘をつく。
首謀者はわたし。

どうしてこんなことしたのか皆目見当もつきません、と述べた。
けれど先生が本当は生徒たちから支持されているおかげで、自尊心を保てていることも承知。

あなたはずるい大人。そうして私も逆らえないの。ほかの生徒と同様。

先生、ところで本をお返ししたいんですが。
鞄から文庫を取り出して渡すと、ああ、そうねえと気を取り直して受け取る。
その真ん中には押し花の栞。

それはね。

わたしが一週間かけてつくった押し花の栞なんです。
それこそが、わたしからあなたへのバースデイプレゼント。

ねえ、先生。
いつか言わせてくださいね、あなたへの想い。

参考 玉置こさめ作者Twitter
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