久良伎「もう今は?今はまだ?」

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「あれ……スイカグミなくなった?」
買い出しで立ち寄ったコンビニで。私の家に遊びに来ている小学生の姪っ子のさなちゃんが、お菓子コーナーの商品棚をじーっと見つめてからそう言った。

「先週来た時はあったのに……」
どうやらそれなりにお気に入りだったようで、少し拗ねたような表情でぶつぶつと文句をこぼしながら、本当になくなってしまったのか、疑うように近くの段を見まわしていた。
「もう秋だからね。仕方ないよ。あ、でもその代わりに……ほら」
そう言って私は、秋季限定という宣伝文句のついた、さつまいもを生地にふんだんに練り込んだタルト菓子の箱を手に取って、さなちゃんの前に差し出した。どう?おいしそうじゃない?と尋ねると、彼女の機嫌はますます悪くなっていく。
「いりません、そんなの」
ふいっと視線をこちらから逸らし、今度はスイカグミの他に何か夏っぽいお菓子が他に残っていないかを探し始めたようだった。チョコミント系のお菓子に手を伸ばしては、少し考えてからまた引っ込めるという動作を繰り返す。いや、さなちゃんチョコミント食べれないじゃん。なんでそこまでして……

「どうしてそんなに夏の商品にこだわるの?」
そう言葉にしてから少し後悔する。なんだか、彼女のことを責めているみたいで。みんな秋に向かおうとしてるんだよ、そう急き立ているようで。でも、そう問われるやいなや、さなちゃんはすぐ――――
「夏はまだ終わってないからです」
そう言い切ったのだった。
「い、いやいや、もう9月だよ?秋の食べ物だってたくさん出てるし」
「はい。でも、まだ終わったって思えないから」
自分の中ではまだ夏なんです。まるで、世間一般の認識とは関係ないと言わんばかりの調子で。彼女は自分の感覚を、何にも流されずはっきりと表現した。


「だから、今日は花火をします。さっき売れ残りを見つけました」
商品があった場所を指さして、さなちゃんは急にそんな突拍子もない提案をし出す。
「は!?えっ、だめだよそんな……近くに公園ないし」
「お姉さんのマンションのところの広場でやる」
「絶対無理!怒られちゃうよ……」
「いいの!」

その時は、お姉さんのせいにしますから。そう言って、悪戯っぽく笑った。

作家コメント
季節は変わる。でも、その早さについていかなくたっていい。そんなお話でした。
参考 久良伎作者Twitter
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