夢見絵空「恋多き乙女」

彼女は恋多き乙女だ。
いつも誰かを好きでいた。小学校高学年くらいからずっとそうで、高校三年の今となっては、彼女が付き合った人数を親友の私でさえ把握していない。
小学生の頃からどんくさくて、放っておけない雰囲気をした娘だった。常に傍で見ていてあげないと不安になる。そんな守ってあげたくなる空気を纏っていた。
だから、いつも隣にいた。私が守ってあげなきゃいけない、そんな使命感に駆られて。
何か助けてあげると、柔らかい笑顔で「ありがとー」と抱きついてきた。
私の初恋はそこから始まってしまった。
彼女のことが好きだと理解した頃には、彼女は恋多き乙女の道を歩き始めていた。最初に付き合ったのはクラスの男子。複雑な気持ちで二人の恋の行方を見守ることしかできず、歯がゆかった。
半年の交際を経て、二人は別れた。泣きじゃくる彼女を慰めていたとき、私は安堵していた。
でも、彼女はまたすぐに別の相手を見つけた。私はそれを見守ることしかできなかった。
そしてそれからは、それが繰り返された。彼女は誰かと付き合い、別れ、私に泣きつく。慰めることだけが、私の役目。
数年間、それが続き、私の心はズタボロになっていた。
結果、その現実から逃げるために私は遠方の大学に進学することにした。
街を去る日、駅のホームまで見送りに来てくれた彼女は、また泣いていた。そして私はそれを慰めた。
これが最後の役目だと思って。
電車に乗って、ホームに立つ彼女と向き合った。扉が閉まる寸前、手を振ろうとしたら、急に距離を詰められ――キスをされた。
驚く私に彼女は怒った顔をして言った。
「意気地なし。ずっと、待ってたのに」
ただ、すぐに柔らかい笑顔に戻った。
「帰ってきてね」
やっと、なぜ彼女が私に慰めてもらうようなことを繰り返していたかを理解した。
無情にも、そこで扉が閉まった。
電車がどれだけ遠く離れても、彼女は絶対に手を振らなかった。
彼女はずっと、一人に恋をしていた。

参考 夢見絵空作者Twitter
作家コメント
いつか二人がまた会うことを願ってます。
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