平井「いびつなうつわ」

少女という器は、ひどくいびつにできている。きちんと形があるようで、その実、呆れるほどの欠陥がある。それこそ、器とは呼べないほどに。そのいびつさは、どんなにひねくれた形をしていても個性であるとされる。しかしそれでは既に古い。形は常に更新されているものなのだ。
「ひとつ聞きたいんだけれど」
放課後。すでに陽は落ちて、部活の生徒もほとんどが帰宅した。鈴木ましろと園田茜はゆっくりと靴を履き外へ出た。
昇降口から離れて校門まで。そこからまた公道へ出るための道まで。ましろは次の言葉を続けることなく、茜はましろの言葉を待ちながら歩く。
「私が女子じゃなくても、好きになってた?」
ぽん、と軽く歩道に踏み出しながら、そして茜に自分の目線をぶつけながら。ましろという少女が問いかける。
「さあ?ましろが男でも、今のましろみたいに育ってたら可能性あったかな的な」
「大概ヒドいな」
「そうだよ。酷いし自分勝手だし、面倒なの」
茜はこのところ、ましろと一緒に下校していた。文芸同好会でのましろの執筆の横で自分は美術部の課題の下絵。油絵を主にやらされているというか、部内にある画材の問題で大抵の部員が油絵になる。汚れるし油臭いけど、それ以上に茜は色塗りの行程が好きだ。
木炭で引いたガイドに自分の思い描いた色を乗せて、脳内のイメージに近づけていく。ナイフはあまり得意じゃない。キャンバスを傷つけてしまいそうだったから。
「それでも友達だけどね」
ましろはこの間、茜に告白されたばかりだ。閉鎖的な共学高校の中で噂にならないようそっとしてくれた告白を断った。それでもまだ、友達だ。
「……粘るよね。どうして友達やめてくんないんだ」
「私、茜しか友達いないからぼっちになる」
「ひどい理由~」
二人で笑いながら、駅への道を歩く。もうこれからは試すようなこともない。ただ気持ちをぶつけるだけ。いびつでもこれが私の気持ちですよと、お互いに気持ちを差し出すだけ。

作家コメント
歪んだパズルみたいに離れられない女の子たちの話です。
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