織本コウ「友達」

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「ずっと友達でいてね」
それが彼女の口癖だった。
幼い頃からずっと一緒の彼女、文香がそう言うのは私以外に友達と呼べる人物がいないからだ。
ぼさっとした身なりを整えれば可愛くなる事は私だけが知っていた。
私が言えば彼女は私を疑う事なく身なりを整えて周囲からの反応も変わるだろう。
でもそんな事は言わない。だってそんな事したら文香に穢い虫が寄ってくるからだ。
だからそんな文香の信頼を利用してきた。
それくらい許されるはずでしょ?
だって彼女の口癖のせいで私は抱いたこの気持ちを伝えられないんだから。

そんなある日、文香から突然一通のメールが届いた。

『距離を置きたい』

その一文に色々と邪推したけれど思い当たる節はなく、すぐに理由を聞いた。

『気持ちの整理をしたいから』

普段の私なら直接会って話を聞いた筈。しかし文香から拒否された事が初めてだった為、『わかった』と私は逃げてしまった。

季節が二つ過ぎた頃に文香からメールが来た。

『話したい事があるの』

講義をサボりすぐさま三駅離れた彼女の元へと向かった。
チャイムを押すと開いた扉の先から懐かしい顔が現れた。

「友ちゃん、久しぶりだね」
「だね」

久しぶりのやり取りに心地良さを感じ部屋に入ると見知らぬ女が座っていた。

「私……彼女ができたの」
「……は?」

意心地が悪そうに言う文香の言葉が理解できなかった。

「気持ち悪いよね……女の子が好きなんて」

何も言えない私を見て文香は続けた。

「私、友ちゃんの事がずっと好きで、でもこんな気持ちバレたら一緒にいられないって思って、だから……」

だから? だから何? 私の代わりに別の女を見つけたって事?
ハハッっと乾いた声が漏れた。

「ずっと友ちゃんの事えっちな目で見てて……気持ち悪いよね私」
「そんな事ないよ……」
「でもね、やっと好きな人を見つけて友ちゃんと友達でいれる私になれたの」

真っ直ぐと私を見る彼女の瞳を見てやっと気付いた。彼女の口癖は、自身の気持ちを表に出さないようにする為だったのだと。
彼女の信頼に甘えていた罰が下ったのだ。
今更もう遅いと後悔の念を抱く。
今、どんな顔になってるか自分でも分からない私へ近寄り文香は言う。

「ずっと友達でいてね」

その文香の”いつも”の口癖は全く違って聞こえたのだった。

作家コメント
気持ちは言葉にしないと伝わらない。
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