ATライカ「密度」

「最近、密度が薄い気がする」
 リビングのソファに並んで座る、雑誌を読んでいたセーラー服の幼馴染が顔を上げて言う。彼女のあどけなさを持つ大きな目は、真剣半分冗談半分の光を湛えていた。
「密度ってどういうことさ?」
 私は弄っていたスマホをブレザーのポケットにいれながら聞く。
「何と言うか、付き合ってるのに今までと変わらないじゃん」
 別々の高校に上がるとなった時、私は彼女から告白をされた。姉妹同然に育ってきたから、最初はびっくりしたけど、悪い気はしなかったので私はそれを受け入れた。でも、確かに今までの関係が恋仲と名前を変えただけで、何か新しいことはしていない。
「むしろ……付き合う前の方が距離が近かった気もする」
 心のどこかで、恋人としての幼馴染に対する距離を測りあぐねていたのかもしれない。
「でしょー?何か新しいことしようよぉ」
 私の腕にまとわりついて、口をとがらせる彼女を見て、私は一つ思いつく。
「じゃあ、キスしようか」
 その言葉に彼女は口を手で隠し、そして、にんまりと口角を上げる。すごく嬉しそう。
「いいの?」
「いいよ」
 そう答えると彼女は私の腕を改めてギュッと抱きしめ、目を閉じて唇を差し出してくる。少し赤みを帯びる頬がとても愛らしい。
 私は捕まれていない方の手を彼女の頬に当て、ゆっくりと距離をゼロにした。
 恋人の唇は滑らかで、柔らかく温かい。
 そういえば、彼女は毎日ちゃんとリップを塗っていた気がする。
 ゆっくり離れると、目を開いた彼女と目が合う。
「良かった」
 そして、それだけ言って、私の腕から離れて雑誌で顔を隠してしまう。
 腕と唇から急激に抜けていく彼女の体温と感触。
 私はそれに肌寒さと物足りなさを感じてしまった。このままだと次は私が、密度が薄いとか言ってしまいそうだ。
 そう自覚してしまえば私は、次は何をすればいいんだろう?彼女は何をしたら喜んでくれるんだろう?
 それだけしか考えられなくなってしまった。

参考 ATライカ作者pixiv

コメントを残す