織本コウ「告白」

2

陽だまりの様に笑う彼女の横顔が何よりも愛しいと思った時、私は恋をしているのだと自覚した。
高校に入ってから仲良くなった彼女とはいつでも一緒。
同学年からはラブラブとからかわれる程で私も満更じゃなかったし彼女もそうなのだと思った。

高三の冬、卒業式に告白しようと心に決めた。
卒業後の進路も同じ大学、なんならルームシェアをするのも佳い。
そんな夢の様なキャンパスライフを胸に抱いて。

「蛍、少しいい?」

放課後、珍しく遠慮がちに尋ねる朱里に頷く。

「卒業式が終わった後に話がね……あるんだ」

頬を紅く染める彼女の言葉に私は確信した。
告白だ。彼女も私と同じ気持ちだったんだと嬉しく思った。
木窓から漏れる冬の風が火照った身体に心地よく感じる程に。

それからあっという間に時は過ぎ、三月。
卒業式も終わり、クラスメイト達との別れの挨拶を早々と切り上げ約束の場所へ向かった。

校舎裏の桜の木の下。
約束の場所へ足を運ぶと朱里ともう一人誰かがいた。

「蛍、来てくれたんだ!」
「そりゃね……ところでその人は?」

私が視線の先には目が隠れるくらいに髪を伸ばした人。
名前は覚えてないけど胸に着けた桜のコサージュから同じ卒業生だと分かった。

「この子は矢後さん。えっと……私の彼女なんだ。女の子同士なんて気持ち……悪いよね。でも蛍にはホントの事、言っておきたかったんだ」

一言も発しない私に泣きそうな顔を浮かべる。
泣きたいのはこっちだと言ってやりたかった。
私の気持ちを無視した身勝手な告白に苛立ちすら覚える。

「……いいと思うよ。私、応援するから」

でも私の口から出たのはそんな欺瞞に満ちたものだった。

「蛍……! ありがとう!」

そう言って彼女は陽だまりの様な笑顔を私は向ける。
私も初めて彼女へ偽りの笑顔を向けた。
きっとこれからも偽り続けなければいけない。自身の気持ちさえも。


三月にしては肌寒い風が吹き抜け、やっと桜がまだ咲いていない事に気が付いた。

作家コメント
相思相愛って奇跡みたいな確率だと思います
参考 織本コウ作家Twitter
この作品が気に入ったら、ギフトを贈ってみませんか?15円~贈れます❤
2

コメントを残す