久良伎「どうしても雨は」

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雨はいつだって、私たちの願いとは関係なく、ただ降り続く。

でも、私はこの雨に降り続けてほしい。たとえ他の皆が、晴れの日を望んでいたとしても。毎朝、湿気のせいで全然まとまらない髪と格闘しなくちゃいけないとしても。帰り道、容赦のないスピードで走る車に水を浴びせられたとしても。

ぜったい、止んでほしくない。ずっと雨でいい。だって—-

「ね~今日も部活中止になったんだけど!!」
雨が降れば、瀬戸海さんが私のところに来てくれるから。


だいたい、二週間くらい前。放課後、教室に一人残って勉強をしていた私のところに彼女は初めてやって来て、それから声をかけてくれた。その時も、彼女は部活ができない不満を口にしていた。梅雨に入ってから、グラウンドがしっかり乾かないせいで陸上部の活動ができないこと。最初のうちは屋内でできるトレーニングを皆でしていたけど、それも段々やらなくなってしまったこと。そんな感じのことを説明してくれた。それまで、あまり話したこともなかった私に。

「早く梅雨明けてくれないかなぁ」
明日の英語の予習をする私の向かいに座った瀬戸海さんは、机に肘をつきながら窓の外をぼんやりと眺めて、そう呟いた。瞬間、私の身体は思わずこわばってしまいそうになる。望んでいない明日のカタチを想像して。もう、私のところに来てくれなくなる晴れの日を思い描いて。
「部活……好きだもんね、瀬戸海さんは」
「まーね、部活っていうか、外で、思いっきり走ったりするのが好き」
私は握っているペンをとにかく走らせ続ける。ただの何気ない会話に思ってもらえるように。たかだかちゃんと話すようになって二週間くらいの距離に感じてもらえるように。そう。たぶん向こうは、この時間を暇つぶしくらいにしか思っていないから。
「そっか。なら、早く明けてほしいね、梅雨」
—-毎朝、雨が降っていることを確認して、私はほっとしていた。

雨はいつだって、私たちの願いとは関係なく、ただ降り続く。でもそれは、逆も同じで。


次の日、梅雨は終わりを迎えたようだった。

作家コメント
心の内を明けるには、梅雨は思ったよりも早く明けてしまうようです。
参考 久良伎作者Twitter
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