真里谷「黄昏少女 – Girl in the Twilight」

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少女が、ふたり。
ひとりがもうひとりを抱きかかえている。抱きかかえているほうの少女には、天使のような翼が四枚生えていた。
「空が赤い」
「うん、赤いね」
血のように赤い空。それは地球の敵が別次元から押し寄せてくる「しるし」。
「また人が死ぬのかな」
「ええ、死ぬでしょう」
「とても悲しい」
「私は貴方が悲しむことのほうが悲しい」
「大切なものじゃない、わたしなんて。あの空で死んでいく人たちのほうが、ずっと、ずっと」
「言わないで。本当に悲しくなってしまう。貴方はとても大切なのに」
「ありがとう。あなたの羽は、とても優しい」
「こちらこそ、ありがとう。そう言ってもらえると、とても心が温かくなる」
「だけど、あなたももうすぐ行くのね。あの場所へ。戦うために」
「行かなければならないもの。貴方を守るために」
「あなたに死んでほしくない」
「嬉しいな。戦闘機械として生まれた私が、こんなに幸せでいいのかな」
「あなたにだって、生きる権利はある。幸せになる喜びはある」
「そう。それらすべてを守るために、私はやがてあの空に向かう」
「あの空が何もかも持っていってしまう。貴方も、お父さんも、お母さんも」
数秒の沈黙。
「ねえ、キスしていい?」
「わたしなんて……」
「貴方の唇は、何よりも麗しいのよ」
向き合って、キスをした。深く、静かな口づけ。
とろけるような時を経て、唇は離れ、視線は絡み合う。
「帰ってきてね。いつかあの場所へ行っても、絶対に帰ってきてね」
「どんな子どもも、夜には帰ってくる。私だって、帰ってくる。太陽が沈んでも、月が導いてくれるもの」
「約束よ。そう、約束だよ」
「必ず戻るから。貴方のために。貴方とともにある、この世界と美しい星のために」
少女が、ふたり。
ひとりは人間で、もうひとりは兵器。
有機物と無機物のあいだに生まれた、温かくも冷たく、何よりも強固でありながら儚い、黄昏時の愛の調べだった。

作家コメント
会話を多めに、叙情みをスパイスに。どうか愛に良い行く末を。
参考 真里谷紹介サイト
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