—-わたし、ここにいたらめいわくですか?
そう聞くと、大きなひとたちはみんな、こまった顔をしました。それは、ちがうよって意味じゃなくて。この子はどうしてそんなこと聞くんだって、やめてほしいって、そう思ったからなんです……たぶん。
目をさました時、ぱぱとままはもう、いなくなっちゃってて。どこにいけばいいかわからなかったわたしは、色んなひとのお家につれていかれました。こわい顔をしたおばさんのところ。夜になると、いつもわたしの名前をだしてけんかするひとたちのところ。わたしと同じくらいの子がいて、ふたりとも仲よくねって言うけど、わたしのいないところで、ごめんねって、その子にいつもあやまっているひとたちのところ。
「ったく、なんだろうねあの子は」
「仕方ないだろ、だってあの子は……」
「ねぇわかって、あの子はね……」
みんな、わたしがいると、かなしそうでした。
*
たばこと、香水のにおいでいっぱいのお家に住むようになってから、一カ月くらいたちました。わたしをあずかってくれているその女のひとは、こわそうな男のひとをつれてくることがあって、そういう日は、わたしはよくねむれませんでした。そしてある日、小学校からの帰り道。お家に帰りたくなくて、公えんのベンチでぼうっとしていると、いつのまにか寝ちゃったんです。
「あ、起きたかな?」
目をさますと、わたしの横にはひとりのおねえさんがすわっていました。おねえさんは、わたしがひとりで寝ていて心配だったから、見ていてくれたそうです。わたしはわるいことをした気持ちになって、あやまりました。
「え、ううん、全然いいんだよ」
おねえさんは笑ってそう答えて、あたまをぽんぽんとなでてくれました。
「むしろさ」
しばらくして、おねえさんはこう言ったんです。
「私がここにいて、迷惑じゃなかったかな?」
ほら、友達とか、親御さんがさ—-そうつづく言葉をさえぎって。わたしはおねえさんのむねに飛びこみ、たくさん泣いてしまいました。
おねえさんはなにも聞かず、わたしが泣きやむまで、ずっとそばにいてくれました。
