玉置こさめ「カサブランカ」

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我こそは女王といわんばかりのあなた。
寂しかったとあなたが云った。
そんな言葉があなたの口から紡がれるなんて思ってなかったの。図書委員の委員長殿。私はただ図書室が好きで、何故というに、そこにしか居場所が感じられないからよりどころとしているだけで熱心に読書をしてきたわけではなかった。思い切りが足りない。どうせいつも一人なら本を読めばいいのに、と複数名の座れる席から離れた個別の仕切りのある学習机で居眠りする私にあなたはそう言った。彼女はまるで図書室の支配者といわんばかりに本をよく知っていた。将来は司書になりたいと仰る。素敵な人。透けるような白い肌に薄淡くそして豊かに広がる髪。まるで女王のように目に映える。本に興味がないと告げると、あれこれ尋ねてきてこれなんてどうかしらと差し出してくれるの。段々あなたを従者のように感じ始めていたの。新学期になって私はその本の影響でやりたいことが出来て手芸部に入った。彼女は最初は喜んでくれた。たまに図書室にきてね、と。けれど忙しくなって疎遠になったある時。
偶然廊下で久しぶりにばったり会ったら、その途端に狂おしそうに逃げ出した。あの堂々たる方のなさることではない。追いついて腕を掴んだら、振り向いてそれでも笑う。あなたがお元気そうで良かった、と笑う。
そうよ元気よ。と云って見せたら、その人は俯いた。
私は寂しかったの。そう白状する美しい人。ああ。
抱きしめてもいい? 聞くよりも早く私は抱きしめてしまっていた。

参考 玉置こさめ作者自サイト
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