辰巳「至極つまらない人生」

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それは、 ’’至極つまらない人生 ”行きの列車に乗っていた時だった。
ひらりとスカートを靡かせてバレエシューズで踊る少女は、私を見るなり手を差し伸べて言う。
「おいで。私といれば楽しくなる」
おかしなことを言う少女だな、と思った。私はこれから ’’至極つまらない人生 ”に行くのに、あなたといたって楽しくなるはずがないじゃない。そもそも制服にバレェシューズ、似合わない赤リップなんてつけちゃって、とついう風の吹き回し?
「バカじゃないの」「本当だよ。あなたに嘘はつかない」「どうして?」「私はあなたのお嫁さんになる女だから!」
てんでおかしい少女だ。けどこの子のことは私、よく知ってる。そう、 ”ここ ’’で会うのは初めてだけど、ずっと前から ’’あっち ”で私に声をかけてくれていたあの子。
「こっちの私にまで気にかけて来ちゃったの?」「ここのあなたが変わらなきゃ、あっちのあなたが私の手を取ってくれないもの!」「ふ、ふふ」
なんてワガママな子なんだろう。そして楽しくなっている自分に気付き、私はその手を取ってみようと思った。何故って、私は。
「私の人生を、変えたい!」「そうだよ!その意気だよ!人生にレールなんてあってたまるか!」
そう言って私たちは ”至極つまらない人生 ”行きの列車から飛び降りた。
降り立つは現実。不思議な列車もバレエシューズ姿のあなたも、やさぐれた私もいない。
「ははっ」「えっどうしたの?」「ちょっと変な夢思い出しちゃって」「も~!大事な場面なのに!」「ごめん。だけど、うん。やっぱりあなたには赤よりオレンジが似合う」
あの日、やさぐれていた私の手を取り救い上げてくれたあなたは、 ’’至極幸せな人生 ”に導いてくれた。
「愛してる」
人生、捨てともんじゃない。そしてウェナイングドレス姿の二人は、眩ゆい夕陽の中、ロづけを交わした。

作家コメント
June bride
参考 辰巳作者Twitter
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