ATライカ「セックス」

「セックスがしたい」
 放課後、幼馴染に校舎裏に呼び出され、開口一番そんなことを言われた私の気持ちを答えよ。
 答え『参ったぞ。これは茶化してはいけないやつだ』
 いつも飄々としている幼馴染が、いつになく真面目に緊張した表情を見せているのだ。これは彼女なりに思いつめて言った台詞であり、私はこれに大真面目に回答しなければいけないのだ。
 非常に煩わしい。煩わしいが、私の彼女の好きな所である。この、頭の良すぎる幼馴染の、自分の頭の中で思考を完結させ結論しか言わない欠点が。
「確認するね」
 彼女の一言から彼女の思考を私が解きほぐす行為は、一つの私達の儀式のようなものでもある気がする。
「まず、私が好きなんだね?」
「うん」
 彼女はいつも私の言葉に言葉少なに答える。
「その好きは友達としてではなくて、あー……性的に?」
「端的に言えば」
 なぜ私が恥ずかしい思いをして、目の前のこいつはただ頷くだけなのか。理不尽だ。
 しかし、これだけでは『付き合って』ではなく『セックスがしたい』と言う理由にはならない。少し考えた後。
「付き合って、だと私がはぐらかすと思った?」
「うん」
 なるほど、確かにはぐらかすかもしれない。でも、それでも『キスがしたい』でもよかったはず。幼馴染の言うことは確固たる意味がある、私はそれを理解してあげたい。
「キスだけじゃ、満足できないってこと?」
「うん」
「普通、そういうのは時間をかけるものじゃない?」
「まあ……」
 そっぽを向いて、煮え切らない返事。否定的ってことだ。彼女はそこまで性急な性格をしていただろうか、いや、していない。じゃあ、どうしても急ぎたいのだ。私は考え込む。
 ああ、そうだ。そうだった。
 彼女は来年からアメリカの学校に通うのだった。私の前からいなくなるのだった。
「つまり……」
 なんだか私は悲しくなってきた。この問答は、残された時間の少なさを強く認識させられてしまう。
「恋人としてすること全部、したいんだね?」
「うん」
 なぜ私がはらはらと泣いて、頭を撫でられるのか。

参考 ATライカ作者pixiv

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