朝霞晴春「鈍色の再会」

 1人暮らしをしている東京から地元へ帰省した。
 日に日に寒さの増す、大学1年の冬のことだ。

 薄っすらと雪化粧をした街を歩いていると声をかけられる。

「あれ、もしかして千夏?」

 振り返ると花梨がいた。

「やっぱり千夏だ、久しぶり」
「久しぶり、花梨。その……ずいぶん変わったね」
「そりゃ中学校以来だもん。元気してた?」
「……うん」

 私たちは親友だった。
 
 1年で同じクラスになってからいつも一緒にいた。
 妙に馬が合い、違うクラスになってからも毎日一緒に下校した。

 2年の夏、花梨の家に泊まったのは今でも覚えている。
 テレビを見ながら、夜遅くまでくだらない話をした。

 その花梨は、私の知る花梨ではなくなっていた。

 髪は明るいブラウンに染まり、髪はボブになっている。
 耳にはピアスが開いていた。

 なんとなく胸が詰まるような気がした。

 黒くて艶のある彼女の長髪が、私は好きだった。
 ピアスは私が開けたかった。

「千夏は相変わらずだね。あの頃から全然変わってない」
「そう、かな……」

 そうだよ。
 この髪は中学のときからずっと変えていない。
 
 だって、花梨が好きだと言ってくれたから。

「せっかくだしID交換しとこうよ」
「あ、そうだね……」

 まだ中学生の頃、私はスマホを持っていなかった。
 スマホを取り出しSNSアプリのQRコードを読み取る。

 花梨のプロフィールを見ると、知らない女の子たちと撮った写真がホーム画面に設定されていた。
 写真の中で花梨は楽しそうに笑っていた。

 私の知らない笑顔だった。

「…………」

 かつて私が独り占めしていた花梨はもはやいない。

 まったく違う4年間を歩んでいたのだと、否が応でも思い知らされた。 
「ずっと一緒だよ」と言い合っていたあの頃とは、私も彼女も致命的なまでに変わってしまった。

 だけどきっと、人生なんてそんなもんだ。
 関係性は変わる。

「じゃ、そろそろ行くね」

 花梨が手をあげた。

「今度一緒に、ご飯でも食べに行こうよ」
「うん」

 鈍色の空の下、私たちは別々の方向へと別れた。

参考 朝霞晴春作者Twitter

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