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「お姉ちゃんおかえり」
あさひは、扉を開けてわたしをいつものように向かえた。
「今日は遅かったね。部活お疲れ様!」
わたしたちは2つ離れた姉妹。
離婚した両親の連れ子で血は繋がっていないけど、わたしはずっと妹が欲しかったので、あさひという妹ができて心の底から嬉しかった。
あさひは小学校の時いじめられてひきこもりになってしまったらしく、ずっと家にこもりっぱなしの子だった。
人に対して臆病になってしまったあさひとなんとか仲良くなりたくて、あさひの好きなアニメやゲームを調べて部屋に通った。
毎日部屋に通ううちに少しずつ、少しずつ、あさひも心を開いてくれて、お父さんもお母さんも安心したようだった。
私たち姉妹は、次第に姉妹であり、親友と呼べる関係になっていたと思う。
「今日はお姉ちゃんの大好きなペペロンチーノ」
夕食の支度はいつも通り家族全員分用意されていた。
「美味しい?お姉ちゃん」
『うん、美味しいよ』
「ふふ、お姉ちゃん辛いの苦手だからいつも通り鷹の爪は少なめなんだよ」
全く減っていないペペロンチーノを片付けるあさひの背中を見守り、わたしは胸をかきむしる思いだった。
後で知ったのだ。
何でもあさひのことは知っていると思っていた。何でも言いあえる仲だと思っていた。
なのに、知らなかったのだ。
あさひがわたしに、姉以上の感情を寄せていたことに。
「お姉ちゃん、今日ね学校でね」
まだ中学2年生のあさひ。
お母さんとお父さんの帰りが遅いからいつもわたしたち2人で先に夕食食べていたっけ。
ごめんね、ごめんね。
わたしの制服をしわくちゃになるくらい抱きしめ、わたしの仏壇の前で学校の事を語るあさひの笑顔は、いつもと変わらない笑顔だった。
作家コメント
生きているうちに伝えておかなければいけないことってありますよね
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