ノモグサきくよ「膝の上の砂糖菓子」

授業終了のチャイムが鳴った。起立、礼、着席と一連の儀礼を済ませて教科書を机に仕舞う。
「カナタ、数学の宿題見せて~」
サヤがちょこちょこと近寄ってきた。サヤは数学が苦手で頻繁にノートを見せたり教えたりしている。この高校を受験したときも、他の科目に比べてボロボロな数学を私が教えてなんとか試験に合格したのだ。
「じゃあ今日も、膝に乗って」
「はーい」
サヤにノートや宿題を見せる度に、膝に乗せて抱きしめる。サヤは小さい。膝に乗せても私と頭の位置がそう変わらないくらい。目の前に広がるボブカットの髪を眺めていると、ほんのりとシャンプーやパルファムと、それらに混じる彼女自身の香りがした。サヤらしい甘くて可愛らしい香りだ。口内で飴玉を転がすように、サヤの香りと手触りを楽しむ。
「サヤは相変わらず、抱き心地がいいねぇ」
「え~、嬉しいけど恥ずかしいな」
私の膝に座って宿題を書き写すサヤ。丸っこくて愛らしい文字でせっせと書き写している。姿も、声も、香りも、書き文字までも可愛いなんて、存在全てが柔らかな砂糖菓子のようだ。
「うわ~、この問題も分からないんだよねえ」
「試験のときは頑張りなよ?」
「またカナタに教えてもらうから、お願いね」
そう言って、背中で体重を掛けられる。体格が小さいから全然重くなくて、簡単に支えられてしまう。同時にサヤの体に回す腕の力を強めると彼女の体温が一層感じられて、ああこのまま一つに溶けてしまいたい、なんて思った。
サヤの事が好きだ。私がこんな感情を抱いているなんて、サヤは思いもしないだろう。
「終わったよ~」
もう宿題を写し終わったようだ。サヤが身を起こそうとする。この時間が終わってしまう。
「もうちょっと」
「もうすぐ授業始まっちゃうよ?」
「ギリギリまで」
「好きねぇ、カナタも」
好きに決まっている。五感すべてであなたを味わうほど。
サヤを抱きしめることで思いを消化し続ける。いつか溢れてしまわないように。

参考 ノモグサきくよ作者pixiv
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