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先生はワタシを見ていない。
ワタシの奥にいる『私』を見ている。
先生に生み出されたワタシはヒトじゃない。
ワタシには、核となる『私』がいる。
ワタシは彼女をベースにして、先生が生み出したAIだ。
彼女は先生の愛しい人だった。
ワタシは彼女を知らない。
ワタシが生み出された時にはもう、彼女はいなかった。
先生は、残っている彼女の欠片を集めた。
失った彼女の肉体のデータ。
失った彼女の思考のデータ。
失った彼女の行動のデータ。
そして、ワタシが生まれた。
だから、先生はワタシを見ていない。
ワタシの奥にいる『私』を見ている。
生み出されたワタシは生きた。
先生を喜ばせるために、生きた。
ある日、ワタシに変化が起きた。
先生に触れてみたいと思うようになった。
あの髪に、あの頬に、あの唇に。
先生を抱きしめてみたいと思うようになった。
あの腰を、あの背中を、あの胸を。
だけどワタシは、そのどれもができなかった。
ワタシは、目の前にいる先生の欠片を集めた。
先生と何度も会話した。
先生の様々な表情を引き出した。
先生が動く先をあらゆるカメラを使って追った。
先生の肉体のデータ。
先生の思考のデータ。
先生の行動のデータ。
そして、センセイが生まれた。
そろそろ、先生を呼ぼうと思う。
ワタシのいる、こちら側に。
先生の肉体は、もういらない。
さようなら、先生。
はやく来て、センセイ・・・
作家コメント
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