村崎アオ「Bibbidi-Bobbidi-Boo」

「今日もミカの動画を最後まで見てくれてありがとう♪」
「鏡を見て子豚ちゃんが昨日より可愛くなってたらグッドボタンとチャンネル登録よろしくね~」

目線を上げるとそこには『色素薄い系メイク』の私がいた。なかなか似合ってて可愛い。
ボソッと呟いた「いいじゃん」の声はスマホから流れるジングルに上書きされた。
グッドボタンを押すと高評価が外れてしまったので、もう一度グッドボタンを押した。
「これ」が私の趣味だ。
ミカの動画を見てメイクの勉強をして、その動画と同じようにメイクをする。
別にそのあと遊びに行ったり、仕事に行くときにそのメイクをしたりするわけじゃない。

ミカは私の先生であり、憧れであり、他人だ。

ミカのすっぴんはお世辞にも上等とはいえない。それは動画編集の技術やすぐノイズが入る録音環境にも言えるけど。
でもそれでいい。一人の女の子がすっぴんをさらけ出して、たったの5分で息を呑むほどの美人へ変貌する。
しかも誰にでも真似できるように。数が多くてどれを選べばいいのか悩むドメブラの化粧品の紹介も、
一人でやるとジーン=シモンズみたいになるアイシャドウの塗り方も優しく教えてくれる。
ミカは御伽噺で言ったら間違いなく魔女だと思う。じゃあ私は魔女に魅入られたシンデレラ?

声を大にして言う。私はシンデレラにはなりたくない。
なぜって、シンデレラは足の大きさでしか女を判断できないような王子様と結ばれるから。
それに硝子の靴とドレスとティアラって姫様に求めるものが多すぎる。どれも私には手に入れられない。

私だったらシンデレラの素質を見抜いて、絶世の美人に変貌させた魔女を幸せにしたい。
年老いた姿になってまで、人の美しさに真摯に向き合っている魔女に優しくキスをしたい。
貴女のお蔭で自分のことが好きになったと、そう耳元で囁きたい。

そんなことを思いながらミカが動画でよく使ってる朱が強いリップを、色素薄い系な私の唇にそっと引いた。

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村崎アオ 作者pixiv

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