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ATライカ「雨に降られて」

 雨が降っている。私は公園の休憩所の屋根の下で、雨宿りをしていた。
 そして、下着は透けていないかしらと、胸元に目を落として背中を見ようとしている所に、水を蹴る足音が近づいてきた。
「あ、こんにちは」
「……こんにちは」
 同じく雨に降られて、また同じように雨宿りに来たのは、これまた同じクラスの女の子だった。名前は、苗字だけは思い出せた。しかし、それを思い出せただけで、特に会話は繋がらなかった。
 重苦しい沈黙の中、彼女を見ていて気が付いたのは、彼女の下着がうっすらと透けてしまっていたことだ。私は降りはじめに駆けこめたからいい物の、彼女はずいぶんと振られてしまっていたらしい。
 私は、この沈黙から逃げたいもの半分、彼女のことを思って半分。鞄からタオルを取り出して彼女に手渡した。
「ん」
 貸してあげる、と言う言葉が何故か出てこずに、ただ彼女に向かってタオルを差し出す。
「えっと……?」
 彼女も察しがあまり良くなかったらしく、ここでまた場に沈黙が流れ始めようとした。
「貸す。返さなくていい」
 私は彼女に対する謎の恥ずかしさから、タオルを投げ、鞄を持って屋根の下を駆けだした。彼女が後ろで何か言ったようだったけど、聞こえなかった。
 初夏の雨はぬるく、汗と混じって気持ち悪かった。
 紫陽花はまだ咲いていない。

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