藍瀬青「初恋/光」

 ソシャゲに初めて触れたのは中学生のときだった。中学入学時にやっとスマートフォンを買ってもらい、周りの話題についていけるようになった。クラスの女子のあいだで流行っているアプリを入れ、ゲームで遊んだ。親に課金はしないようきつくいわれていたので毎日こつこつログインボーナスをためてはガチャを引いた。
 当時クラスで流行っていたのはかっこいい男の子がたくさん出てくるRPGだった。ゲームは面白かったのだけれど、あたしはどんな男の子よりも主人公の女の子の方が好きだった。でもみんなの前では「××くん、いいよねー」と話を合わせた。小学校高学年のころからうっすらと感じていた違和感がはっきりと姿を現した。二次元であれ三次元であれ、あたしは男の子より女の子が好きだった。誰にもいえなかった。クラスで浮いた存在になるのは嫌だ。孤立したくない。
 なんどか男の子を好きになろうとして、付き合ってもみたけれど、無理だった。そのたびに自己嫌悪に陥り、罪悪感で胸がしめつけられた。
 ごめんなさい。
 胸の底でその言葉が、道路脇の雪のように溶け残った。排気ガスで黒く汚れた雪のかたまり。男の子と付き合いながらほかの女の子のことを考えていたあたしにはふさわしかった。同じ部活の後輩。本当に好きだったのはその子だった。あたしが求め、欲していたのは、眠れない夜に思い浮かべていたのは彼女だった。彼女のことを思い浮かべると薄汚れた雪のかたまりは溶け、綺麗な水たまりが光を反射してきらめいた。その光は長い間、あたしを励まし、勇気づけてくれた。女の子を好きでいいんだと、誰にも謝らなくていいんだと、優しく道を照らしてくれた。
 初恋だった。彼女の顔はもうはっきり思い出せない。でも、その光はまだ、ここにある。春の夕暮れに桜に宿り、初夏の風に舞い、秋空に透き通って、雪とともに降る。あたしはそれを感じる。感じることができる。

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