繁忙期の為11月中の更新はお休みさせていただきます。次回12月5日の更新となります。

ATライカ「白無垢の彼女」

 季節の移り変わりで強くなってきた西日が目に刺さる。夕日が私のカンバスに色を落とし、今日はこれ以上絵を描くことはできないようだ。
「今日はここまで」
 私がそうカンバスの向こう側にいる裸の女性に声をかければ、絵のモデルをしてくれている彼女はゆっくりと姿勢を楽にした。
今日の進捗を夕日の赤色が邪魔だなと思いながら確認する。やはり彼女は美しい、それを本人を差し置いて再認識する。
「ちょっと」
 その声に顔を上げれば、いつの間にか彼女カンバスのこちら側に来ていて、様々な絵具が染みついた私の手をとっていた。
「先に手、洗いなさい」
 無意識のうちに、捲っていた袖を戻していたらしい。彼女はそれを止めたらしかった。
「ごめん」
「綺麗な手なんだから、大事にしなさい」
 彼女がそう言いながら私の袖を捲っていく。袖に背景に使ったブルーが色濃くついていた。
「君のが綺麗だよ」
 私が掛け値なくそう言うと彼女の手が止まる。その手に私の汚い絵の具が付いていて、美しい彼女が穢されたようでとても不愉快な気持ちになった。
「手、洗おう」
 私は彼女から背を向けて手洗い場へと向かう。
「ちょっと!」
 すると、鋭い声で引き留められた。
「ああ、忘れてた」
 振り返ると、彼女は裸であった。しかし、彼女は首を振って口を開いた。
「違う。貴女もとても綺麗よ」
 夕日に映えたその顔は、少し悲しげだった。

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