ATライカ「キスマーク」

 こいつわざと見える所にキスマーク付けとるな、と半ば確信したのは多分日付が回ったくらいで。それに気が付いた時、なんとなく私の一部分が醒めた気がした。
「ちょっと」
 私の上で首に顔をうずめる彼女の髪を梳きながらそう言うと、彼女は吸いつくのをやめてこちらを見上げる。
「何?」
「見えるとこにマーク付けるんやめて」
 大きく息をする上目遣いの彼女に醒めた部分が若干熱を帯びながらも、お願いをすると彼女は少し首を傾げる。
「明日仕事あるからやめて欲しいの」
「知ってるけど?」
 なぜやめねばならないという態度の彼女に別の意味の熱が加わりそうになると、彼女がそれを察したらしくすぐに態度を変える。
「じゃあ見えないところならええ?」
「まあ、ええで」
 それなら別に構わないと思って一瞬気を緩めた瞬間、視界いっぱいの彼女、そしてぬるりとした感触を口に感じた。彼女がキスをして来たらしい、これに私は応えるだけなので目をつむり舌を絡めようと伸ばす。
これでキスだけならよかったのだが。
「!」
 舌を伸ばすのまでは良かった、だが、彼女は思いっきり吸ってきやがったのだ。
「見えないところならええんやろ?」
 押し飛ばし、その顔を見れば、彼女は挑発的で蠱惑的な笑みでこちらを見ていた。私は若干背筋に冷たい物と熱い物が同時に走った。
 長い夜になる予感がした。

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