ATライカ「双子」

 私が触れるガラスの向こう側の、無機質な部屋に私がいる。彼女もおもむろに手を挙げて、ガラス越しに彼女と私の手が合わせられる。
 二人の私の手は、同じ大きさ。
「こんにちは私」
 口を開いたのはどちらだろう。いや、同じ声で同じ考えの言葉だから、どちらの言葉でも構わない。
 私は白い肌に艶やかで長い黒髪を持ち、大きな目は知性に溢れている。顎のラインと唇はシャープで、鼻は筋が通り高い。全てのパーツが調和を取り美しい。
 私は彼女を見てその美貌に見とれる。彼女は私、私は私に恋をする。
 私と彼女は全てが同じ。違うのは立つ世界と衣装だけ。
「そっちは楽しい?」
 同じ声で、
「まあまあかな」
 同じ考え。
 私は彼女を美しいと思う。抱き締めたいと思う。髪に触れ、頬に触れ、指を合わせキスをしたいと思う。そして、愛を語りセックスをしたいと感じる。
 ガラス越しに合わせた手の温度が伝わってくる気がした。
「私、貴女が好き」
 これは私の声。最初に踏み出したのは私。そして、その言葉に彼女は微笑む。綺麗。
 ゆっくりと赤い赤い唇が開く。全てが魅力的。

「私は貴女が嫌い」

 冷たく無色の衣装に身を包んだ私。
 暖かく多彩な衣装に身を包んだ私。
 二人の私の声は、同じ美しさ。

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