繁忙期の為11月中の更新はお休みさせていただきます。次回12月5日の更新となります。

リィム「瓦礫の華」

世界中を敵に回しても、ずっとあなたの側にいる。
昔そんな歌詞に苦笑した覚えがあるのだけど、自分がその立場になるとは思っていなかった。
ビルだったものの残骸に隠れて、淀んだ夜空を見上げる。雲の切れ間に無数の黒い物体が飛んでいた。突如周囲に轟音が響く。地面が抉られ、業火が噴出する。
慌てて身を伏せる私だったが、彼女は至って冷静だった。天を睨み片手をかざすと、黒い物体は燃え、破片が流星のように地上に降り注いだ。
戦火を背に、彼女はあどけない笑顔を見せる。
「そんなビビらないでよー、もうすぐ終わりだと思うしさ」
「うるせぇ、あんたと違って不死身じゃないの、こっちは」
彼女は異端の力を持っていた。世界を滅ぼしかねない強い力。それを行使するつもりなんて無かっただろうけど、慄いた人間たちは研究と称して施設に封じ込めた。私はそこの元研究員。最初は神秘の解明に胸をときめかせていたけれど、すぐに目が覚めた。研究とは名ばかり。議論されたのは、不死身の彼女を、いかに殺すか。
そこまでするか、ふつー。
不真面目な私は、彼女を連れ出して逃がしてやることにした。でも、すぐにばれた。ばれて、殺されそうになって、気づけば施設が地形ごと消し飛んでいた。
「おねーさん、優しいねー! これからも一緒にいてくれる?」
「ん、いいよ」
たぶん、選択を間違えた。後悔する私に、彼女はよく懐いた。
それからは追われる日々だ。文字通り世界中が敵になった。まぁ、こっちは無敵。さっきみたいに爆撃機をけしかけられても、まるで紙ヒコーキのように墜とせてしまう。
私たちが通った跡に、生きているものは根っこも骨も何ひとつ残らなかった。
私たちが通っていない場所は、世界中でもあと少しになった。
「全部終わったら、おねーさんに地球半分あげるよ! 北と南どっちがいい?」
「どっちもいらん」
こんな世の中だ。少しは夢見がちに生きてみるのも悪くない。
「半分にしたら、一緒にいれねーだろ」
「あはは! それもそうだね!」
瓦礫の山に咲いた彼女の笑顔は、どんな生き物より美しかった。

作家コメント
世界の終わりに。
LINK

リィム作者pixiv

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA