樫間島 詞花「百合はどんな壁をも超える、あるいは最後の一撃」

 愛はどんな壁も越える、なんて嘘だと思っていた。
 でも隣で座る彼女を見る度に、誤りだったと確信する。
 じっと見られたことを不思議に感じたのか、彼女は首を傾げた。豊かな銀髪が流れるようにたゆたう。
 ここには私と彼女だけ。ゆったり流れる時間とふわふわした空間が心地良い。
 彼女が立ち上がって窓際へ軽い足取りで歩み寄り、日光を浴びながらぐっと体を伸ばした。
 彼女はひなたぼっこが好きらしい。これが無いと生きていけないと言うように幸せな顔をする。
 つられて私も丸い銀枠の窓に近づく。
 窓からは息を呑むような絶景が広がっている。
 白く波立つ蒼と輝く太陽がまるで名画の様に美しく空に映えている。
 真似して私も伸びをする。彼女は笑いながら話しかけてきた。
 残念ながら何と言ったのかは分からない。私と彼女は言語が違うのだ。
 それでも私は彼女と話すのが好きだ。彼女の鈴を転がしたような声が好きだ。
「ひなたぼっこ気持ち良いね」
 私も言葉を返す。私が話すと彼女も返してくれるから。きっと私たちの会話は文脈を成していない。
 ふと彼女の顔を見て、思わず胸が高鳴る。
 肌は雪のように白く、惹き込まれそうになる漆黒の目を瞬かせて微笑んでいる。
 突然、彼女がぐいっと体を私に寄せて来た。驚いて体勢が崩れ、重心が浮いてしまう。
 小さく悲鳴をあげた私を、二本の腕で抱きかかえるように彼女が支えてくれた。
 彼女の顔が目の前にある。否応無しに顔が熱くなる。鼓動がうるさい。
 彼女が声を発した。何と言ったか分からないが、心配そうな表情から何となく読み取れる。
「ありがとう。大丈夫」
 彼女の右頬にそっと触れると、その上から彼女が手で温かく包み込んでくれた。
 体全体が熱い。彼女に包まれているからか、この状況にどきどきしているからか、別の理由からなのか。私の体温はどうも高くなっているみたいだ。
 彼女を見ると顔が紅くなっていて、照れているようだ。
 きっと私も同じだろう。恥ずかしくてたまらなくて、たまらなく愛おしい。
 私は指を彼女の幾本もの触手と絡ませながら、窓から広がる無限の星々を眺めた。

作家コメント
初見でびっくりして、二週目はにやにやしながら読んでください。
LINK

樫間島 詞花作者pixiv

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。