玉置こさめ「ドロシー」

ターミナル駅で待ち合わせて、きれいな新しい列車に乗り換え。十五の初夏。これはこれで楽しいと感じている。映画研究会に入ってもう三ヶ月経つ。同じクラスになった女の子に突然誘われた。入学しても臆病なあたしはいつも一人でいたのに、震える声で話しかけてくれた女の子。クラス中の生徒に嫌われている子。それはそうだろう。入学式の翌日に、上級生の生徒会長の王子様に告白されたなんてことが起きたら。彼女に罪はないであろうに、翌日から敬遠され、やがて疎まれるようになった。
王子様は全生徒の憧れの的。しかし女だ。その子も、クラスの子たちも、みんなが女なのにこんなことが起きる。そして、一人ぼっちでいたあたしに嘆きの姫が声をかけてくださるなんてことが起きた。ただの『ぼっち』と孤高の姫では対比にならない。たった二人の映画研究会活動と称して外出をしてもよくわかる。うす淡いブラウンの髪、細く繊細な指、華奢な体つき。一緒にいるだけで劣等感でどうにかなりそうだよ。
でも、私たちにはお互いしかいなかった。
ターミナル駅で待ち合わせて、きれいな新しい列車に乗り換え。十五の初夏。これはこれで楽しいと感じている。日差しの眩しい気温の高い季節の白昼、美しいものを鑑賞できる誇らしさは劣等感を大いに凌駕する。
「いつも付き合ってくれてありがとう…」
彼女が言う。照れくさそうに。こちらこそ。
その肩はいつも頼りなく見えて遠くにいってしまいそう。知らないうちにあたしは彼女の掌を握り締めていた。電車はやってくる。手をつないだまま乗り込んだ。ともだちのふり、万歳。王子様じゃなくて良かった。ぼっちのあたしに声かけてくれた時点で、あたしはこの子に忠誠を誓っている。やたらな王子にも騎士にも触らせない。
いつか竜巻にさらわれることがあっても、一緒に飛んで行くよ。ドロシーの犬のトトがどこまでも付いていったように、あたしはあなたの味方。

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